技術の活用の促進が必要不可欠としており、文部科学省において、「公正に個別最適化された学び」の 実現や、教師の指導の充実による教育の質の向上に向け、学校教育において効果的に活用できる先端技 8 https://miraino-manabi.jp/ 文部科学省の方針を踏まえ、学校はどのように個別最適化を進めていけばいいのでしょうか。様々な学校現場に関わりながら、教育の情報化に取り組んできた東北学院大学の稲垣忠教授に話を聞きました。 現状の高等学校は、その多くが大学進学を目標に教育課程を進めていて、社会に出て役立つ能力や人生の選択に影響を与えるような教育が行われていません。報告書では高等学校時代について「今こそ、高等学校は、生徒一人一人が、Society 5.0 における自らの将来の姿を考え、そしてその姿を実現するために必要な学びが能動的にできる場へと転換することが求められている。」と指摘。Society5.0に向かう社会において日本は圧倒的に人材不足であり、ボトルネックになりつつあるということです。報告書では、それぞれの方向性について「Society 5.0 に向けたリーディング・プロジェクト」として、具体的な施策を提示しています。このSociety 5.0という新たな社会で、共通して求められる力は何なのか、社会を牽引していくためにどのような人材が必要か等について、社会像を具体的に描きながら議論したまとめが今回の報告書です。学校だけで教師だけが一方的に教えるような教育活動から、多様な選択肢の中で、自分自身の答えを生徒が自ら見いだすことができるような学習が中心となる場へと転換し、生徒一人一人の興味や関心に沿って、学校だけにとどまらず、地域社会、企業、NPO、高等教育機関といった多様な学びの場を活用し、異なる年齢や背景を持つ相手とコミュニケーションしながら「社会に開かれた教育課程」による学びを進めていく必要がある、としています。これはまさに、「ICTを活用した学び改革」そのものでもあるわけです。今年6月、文部科学省は『Society 5.0に向けた人材育成に係る大臣懇談会』のまとめとして、「Society 5.0に向けた人材育成~社会が変わる、学びが変わる~」を発表しました。Society5.0。いま、社会が大きく変わろうとしています。AI(人工知能)、IoT、ロボット、ビッグデータなどによる第4次産業革命が急速に進んでいます。自動車は自動運転に、外科手術はロボットに、顧客の電話対応はAIが行うような時代です。あなたの手の中のスマートフォンは、90年代のデスクトップパソコンの数百倍、数千倍の性能です。こんな時代に20世紀と同じ教育でいいんでしょうか。今回の報告書は、現状に厳しく切り込んでいて、現場の関係者には耳の痛いこともあるかもしれませんが、ここで紹介しきれないくらい広く、深いビジョンがまとめられています。是非読んでください。この内容は、文科省が示す理想論ではなく、文科省ですらここまで認識しているという最低限だと受け止めて、みなさんの胸の中に留めて活動に活かして頂きたいものです。(編集長:山口時雄)Society5.0とは、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)のこと。狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱されました。こうした課題の解決に向けて報告書では、「技術の発達を背景として、Society 5.0 における学校は、一斉一律の授業スタイルの限界から抜け出し、読解力等の基盤的学力を確実に習得させつつ、個人の進度や能力、関心に応じた学びの場となることが可能となる。また、同一学年での学習に加えて、学習履歴や学習到達度、学習課題に応じた異年齢・異学年集団での協働学習も広げていくことができるだろう」といしています。また、Society 5.0 における教育を見据えた条件整備も欠かせないものであり、AI やビッグデータ等の先端技術が、教育の質の向上に劇的なインパクトを与えることを見据え、ICT 環境や新たな教育ニーズに対応できる学校施設など次世代の教育インフラを充実していく必要があると、ICT環境の整備や利活用の必要性に言及しています。報告書の第2章では、「新たな時代に向けて取り組むべき政策の方向性」についてまとめています。そこでは、次世代の子供たちが未来を生き抜く力を身に付けることができるように必要な環境を整えることは、我々大人世代の責務であり、Society 5.0 の姿をしっかりと見据えつつ、着実に新学習指導要領の理念を実現することが求められている、としています。また、学校や学びの在り方に関しては、「○○だけ」構造からの脱却が求められるとして、「『教職員だけ』による学校経営から、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、部活動指導員等の専門スタッフと協働した『チーム学校』へ。『教師だけ』が指導に携わる学校から、教師とは異なる知見を持つ各種団体や民間事業者をはじめとした様々な地域住民等とも連携・協働し、『開かれた教育課程』を実現する学校へ。『同一内容だけ』児童生徒に教える教育から、『個々人の特性』に応じた教育へ。『紙だけ』で指導や運営が行われる学校から、ICT など先端技術も活用した学校へ。『学校だけ』しか教育の場として認められなかった時代から、フリースクールや地域未来塾等『学校以外の場』での教育機会が確保される時代へ、それぞれ転換が求められる。」と、学校だけでなく社会全体で義務教育を支えていく必要性を示しています。報告書ではこうした状況を踏まえ、今後取り組むべき教育政策の方向性について、子供の成長段階に応じて幼児期から社会人になるまで整理、指摘しています。ここでは小・中学校、高等学校について一部を紹介します。小・中学校時代では、「Society 5.0 を迎え、社会の構造が劇的に変化し、必要とされる知識も急激に変化し続けることが予想される中、義務教育に求められるのは、常に流行の最先端の知識を追いかけることではなく、むしろ、学びの基盤を固めることであると考えられる。」とした上で、「経済格差や情報格差等が拡大し弱者を生むことがないよう、子供一人一人の個別のニーズに丁寧に対応し、すべての子供が Society 5.0 時代に求められる基礎的な力を確実に習得できるようにすることが引き続き重要となる。」と指摘しています。内閣府のWebサイトでは、「Society 5.0で実現する社会は、IoT(Internet of Things)で全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことで、これらの課題や困難を克服します。また、人工知能(AI)により、必要な情報が必要な時に提供されるようになり、ロボットや自動走行車などの技術で、少子高齢化、地方の過疎化、貧富の格差などの課題が克服されます。社会の変革(イノベーション)を通じて、これまでの閉塞感を打破し、希望の持てる社会、世代を超えて互いに尊重し合あえる社会、一人一人が快適で活躍できる社会となります。」と、解説されています。 文部科学省や経済産業省が、未来の教育の在り方に関する提言文書を発表しています。その中には、共通したキーワードも出てきます。その一つが「個別最適化」というものです。「個別最適化された学び」「個別最適化された教科学習」というようにほぼ意図しているところは同じです。 文部科学広報 No.223 平成30年6月号 4 Ⅰ「.公正に個別最適化された学び」を実現する多様な学習の機会と場の提供 学習の個別最適化や異年齢・異学年など多様な協働学習のためのパイロット事業の展開
学びの知見の共有や生成 4. 子供たち一人ひとりに個別最適化され、創造性を育む教育ict 環境の実現に向けて ~令和時代のスタンダードとしての1人1台端末環境~ ≪文部科学大臣メッセージ≫ 12月13日に閣議決定された令和元年度補正予算案において、児童生徒向けの1人1 「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(中間まとめ)」について. 御意見・お問合せ; 子供のSOSの相談窓口 気になるのは、個別最適化が先にあって、指導の時間が短縮できたから発展問題に取り組む、という発想です。私はむしろ逆のベクトルが大事だと思っています。おもしろいプロジェクト学習や探究的な課題があって、それに取り組んでいく過程で、「算数のあの単元がわかっていないと気づいたから、戻ってやってみよう」など、子どもが個別最適化に自分で戻っていくようにしないと、個別最適化の行きつく先は、結局、コンピュータに学ばされるだけの子どもを育てることになります。掲載の記事・写真・イラスト等のすべてのコンテンツの無断複写・転載を禁じます。教室で座ったまま遊ぶ!密にならないレクまとめ【新型コロナ対策】経済産業省の未来の教室事業に、私は教育コーチという形で関わっています。個別最適化のドリルを使っているある学校では、単元の学習がこれまでよりも短い時間で終わったため、その分、発展的な課題にみんなで取り組む時間が増えたといった成果が報告されています。動画系のコンテンツは、NHK for Schoolのように多様な教科向けの番組や、短時間の動画クリップのように、個別の興味・関心に応えられる教材が豊富にあります。一方、個別に学習ペースに応じるための動画を活用した指導法として、反転授業があります。これは、子どもが家で動画を見て個別に学習し、教室の授業ではみんなで練習問題などに取り組むという、従来の授業と宿題を反転させた授業スタイルです。休校明けの荒れないクラスづくり|「居場所づくり」と「絆づくり」個別最適化という言葉には、以前は「公正に」が必ずついていました。これは「公正にチャンスをつくる」ことだと私は解釈していますが、GIGAスクール構想になってからはあまり使われなくなり、その代わりに「誰一人取り残さない」というキーワードがつきました。「誰一人取り残さない」には、不登校の子どもたちや、障害のある子どもたち、外国籍の子どもたちなども含まれるはずです。そう考えると、個別最適化は単に教室で子どもが1人1台の端末を使って何をするかということだけが重要なのではないということです。多様性を意識したうえで子どもたち一人一人のニーズに応えていこうとするものであり、もっと広い意味で捉えることが求められます。かつて私はある先生と組んで、日本で最初に小学校で実証実験をしたことがあります。子どもが家で動画をどのように見たのか、全部記録が取れるシステムを使ったところ、1本5~10分程度の動画を、1回だけ見て終わりの子ども、何度も見る子ども、小刻みに止めながら見る子ども、途中まで見てやめる子どもなど、いくつかの視聴パターンがあり、視聴の仕方に個別最適化が起こることがわかりました。学力の高い子どもは頻繁に止めて、考えながら見ていました。逆に、学力に課題のある子どもは、途中で見るのをやめていました。しかし、単元テストでは、下位層の子どもたちも点数が上がりました。それは、授業中に学び合ったり、先生から個別指導を受けたりする時間が増えたからです。実証実験の結果、学力保障にもつながることが明らかになりました。授業の役割の変化の一つとして、こうした取り組みの広がりを期待しています。PC 1人1台時代の「個別最適化」─子どもが授業以外で学べる環境整備をこれからアプリが改良されていく中で、先生方に提供される情報はどんどん洗練されていくと思います。しかし、データを徹底的に分析することよりも、子どもたちの学びの質を上げるような創造的な授業づくりをしたり、先生でなければできないことをしたりすることに貴重な時間を使ってほしいと願っています。家庭で端末を使用するとなると、インターネット環境がない家はどうするか、という問題が出てきます。 家庭にWi-Fiルーターを貸し出す、LTEや5Gの端末を配る、などの方法も考えられます。あるいは、公民館、町の集会所など、地域の拠点となる場所へ行けばWi-Fi につなげられるようにするなど、各自治体で工夫してほしいと思います。その分、各自治体が負担する費用が増えるかもしれませんが、新型コロナウイルスだけでなく、少子化や社会構造の変化を見据えて検討し、整備していくべきでしょう。最後に管理職の先生方にお願いしたいのは、校内研修などを通して、ドリル系アプリなどの学習履歴の見方を、先生たちに共通理解していただくことです。今後、先生たちは子どもの学習履歴を管理し、個別の学習支援をすることになります。これまで見えなかったことが「見える化」されるという意味では、機械が先生たちに有益な情報を提示してくれることは間違いありません。iPad活用で表現力等アップ! 近畿大学附属小学校のICT実践例ただ、そこから何を読み取り、子どもの見取りとどう結びつけるかが重要なのですが、情報量が多く、ベテランの先生と新人の先生では同じデータでも全く違うことに気づいているかもしれません。学年ごとに全クラスで、同じ時間に同じように使いましょう、という形で進める学校も出てくるかもしれませんが、それでは本来の個別最適化から遠ざかることになります。あくまでも「こういうデータが出た場合は、このような指導をすると、子どもたちが自律的に学んでいくうえで助けになります」といった話を、多くの先生方と議論する機会をもっていただきたいと考えます。小3算数「かけ算のひっ算① (2けた×1けた)」指導アイデア文部科学省の方針を踏まえ、学校はどのように個別最適化を進めていけばいいのでしょうか。様々な学校現場に関わりながら、教育の情報化に取り組んできた東北学院大学の稲垣忠教授に話を聞きました。小島よしおさん:小学生をひきつけるワザと心を鍛えるエクササイズなお、アプリを学校ごとの判断で入れてよい、としている自治体もあります。公立学校の場合は、少なくとも市町村、あるいは教育事務所の範囲で共通部分を考えておくべきです。最初はみんなでノウハウを共有し、意見交換をしながら、より良い活用法を模索していく必要があります。さらに、学校間で使い方などの情報を共有し、異動しても同じツールが使える環境を整えるためでもあります。新型コロナウイルスの感染拡大により、学校を取り巻く環境が大きく変わりました。たとえ学校が休校になっても子どもの学力を保障していくには、端末を家でも使えるようにする必要があります。端末を学校が管理せず、子どもにずっと持たせておくことは、諸外国ではすでに行われています。BYOD (Bring your own device)という言い方をしますが、日本でも高校では自分の端末を自分で管理することが、GIGAスクール構想の前提となっています。日本の私立の小・中学校ではすでに取り組みは広がっています。もはやできるかどうかを議論する段階ではなく、公立の小・中学校でもいずれそうなることは確実であり、いつどの段階で始めるか、という話になっています。小学校のオンライン授業:子どもが集中する4つの型【新型コロナ対策】小学生高学年の心とからだのデータ集2019:身長・体重・生活・夢ほかコロナ禍で短縮の夏休み、先生の過ごし方は?【抽選で3名様に図書カードネットギフト1000円をプレゼント】ICT専任の担当者が教育委員会にいない自治体も少なくありません。そのような自治体がGIGAスクール構想の枠組みの中で主体的に準備を進めていくのは容易ではありません。地元の企業に丸投げするのではなく、近隣の教育委員会と情報交換を密に行い、協力し合って進めていくべきです。体育の新型コロナ対策②:「接触しない鬼ごっこ」と「グループ交代制」ドリル系のアプリでは、ここ数年で、子どものつまずきの分析や、先生側で学習状況をモニタリングするテクノロジーがだいぶ良くなってきています。私が共同研究を行ってきた「やるKey」の場合、先生用の管理画面に、全単元の全問題の一覧があり、クラスの誰がどの単元のどの問題まで終わっているのか、どのレベルの問題を間違えたのか、などが可視化されます。もちろん、モニタリングできる学習履歴は授業時間中だけではなく、登下校中や家庭で行ったものもすべて見られます。紙のドリルのように、先生が丸つけをしなくても、どの子どもに個別に指導する必要があるのかを発見しやすくなりました。これまでは授業の中に紙の計算ドリルや問題集などを使って、習熟させる時間が確保されていたと思いますが、ドリルが授業の中心ではなかったと思うのです。コンピュータが1人1台になったとしても、それは同じです。朝学習や、家庭学習など、授業時間以外で自律的に学ぶために使うことをおすすめします。【臨時休校】自宅学習もこれで安心!みんなのダウンロードプリント端末にどのアプリを入れるのかを決めるのは、多くの場合、教育委員会だと思いますが、導入の初期段階では、基礎的な学力を保障するドリル系のアプリを選択肢に入れておいてほしいと思います。最終的には子どもにとって、コンピュータは文房具のような存在になっていきます。先生が「これを使ってこれをしなさい」といちいち指示をしなくても、学習の中で子どもが必要に応じて自在に扱うようになるでしょう。しかし、今はまだその段階にはない学校のほうが多い状況です。授業時間外でも使えるドリル系のアプリを入れておき、使う子どもも、その学習履歴を管理する先生方も慣れていくべきでしょう。それから、情報教育担当の先生をサポートする体制づくりも重要です。1人1台となると、このままではどの学校も情報教育担当の先生の負担が非常に重くなることが予想されます。負担を軽減するためにも、1人1台配備に取り組むメンバーを増強する必要があります。また、地域の方や保護者の中には、コンピュータに詳しい方が必ずいらっしゃるはずです。本来はICT支援員が1校に1人常駐するくらいが理想的ですが、まずはボランティアの方々と仕事の分担の仕方を決めていくことは、学校の管理職の仕事として今後重要になるでしょう。新型コロナウイルスへの対応で、学校で授業動画をつくって配信する試みがされていると聞きます。自作にこだわりすぎず、すでに公開されている動画を利用することで、子どもとのコミュニケーションの質を高めることに集中する考え方もあります。端末のアプリを授業の中心にして、それさえ学んでいればOKというようなやり方は、私は避けたほうがいいと思います。そうしないと、「学校はいらない」という話になってしまうからです。ドリル系のアプリを、授業中に使う必要はないと私は考えています。授業ではせっかく子どもたちが集まっているのです。教室の中で子どもたち全員が端末に向かい、黙々とドリルをしていたら、それはもったいない話です。一斉授業の中に無理やり組み込み、「最後の5分間必ずやりましょう」などという活用だけでは、個別最適化は実現しません。ドリル系のアプリでは、一人一人が自分のペースで取り組むことが重要だからです。家庭学習や朝学習など、授業以外で自由に取り組めるような時間や機会をつくる必要があります。個別最適化を支援するICTは、①ドリル系アプリ、②動画系コンテンツが代表的です。それぞれの特徴をご紹介します。